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渡辺 靖子インタビュー

絽刺しの歴史は古く、奈良時代に仏教の伝来とともに日本へと伝わった。以来、公卿をはじめ、上流階級の夫人たちの趣味として大切に守り継がれてきた日本の手芸の一つである。そうした中、趣味で終わっては伝統として残らないと立ち上がったのが渡辺靖子さんだ。僧侶の袈裟を刺すなど、格式高い伝統的な絽刺しを復活させる一方、立体感を出した『3D絽刺し』など、今までにない絽刺しの開発にも余念がない。79歳を迎えた現在も、バイタリティに溢れる挑戦者としてあり続けている。

――絽刺しの起源を教えてください。
「絽刺しは、経本を置く台の上に敷く敷物として日本へ伝わりました。日本刺繍もルーツは同じです。日本刺繍は職人に技術が伝えられたのに対し、絽刺しは公家の間で広まってしまったため、一般的にあまり知られないまま1200年という時が過ぎました。庶民にまで伝わったのが明治時代。庶民とはいっても、大店の大奥様の趣味として扱われていたので、一般の人には手が出せないものでした。今でも、そうしたプライドを持った方がいるので、なかなか広まらないのが実情です。でも、趣味だったら、その人が止めたらそこで終わり。東京都に伝統工芸品として認定してもらうために行動をおこし、その時についた名前が『江戸絽刺し』なのです」

――どのように広めていますか。
「江戸川区の区役所のロビーやデパートの催事で説明しながら刺しています。皆さん知らないので、出来上がった作品だけを見せても何だか分からないのです。だから、説明をしながら、刺すのが一番ですね。また、その実演を見て、是非習いたいという方もいて、自宅にて教える方も増えています」

――どのようにして始められたのですか。
「絽刺しの存在は前から知ってはいたのですが、とにかく先生がいらっしゃらない。それで、日本刺繍を生涯の仕事と定めて40歳の頃から刺していました。そうしたらある時、清澄庭園で開催されていた展覧会で、絽刺しの普賢菩薩の掛け軸を見つけて、すっかり惚れ込んでしまいました。鳥肌が立つほど感動して、その場で先生に弟子入りをお願いしたのです」


――日本刺繍と絽刺しの違いを教えてください。
「絽刺しが専用の絽にしか刺せないのに対して、日本刺繍はどんな生地にでも刺すことができます。表現としても、絽刺しは平面的ですが、日本刺繍は立体的に見えるように刺し、生地の空間と刺した刺繍部分の調和を大切にしているところに大きな違いがあります」

――絽刺しの特徴はどこにありますか。
「絽の生地には穴が空いているでしょ? それを、一針一針絽の縦ラインに沿って巻くように刺していくので、ステッチは三種類しかありません。だから、横の線を表現したい時も、糸を横へ渡さず縦に刺していくのです。いってみれば、コンピュータのドット絵のようなもの。目を数えて、刺していくこと自体は簡単なのですが、この一段が出来上がった時に、すごくモノをいうので、どのように刺すのかということをかなり悩みます。このように絽刺しは入口は広いのですが、奥が深いのです。それだけにとても魅力があります」

――日本刺繍と絽刺し、両方出来た方がいいですか。
「小さい絽刺しは、アップリケのようにして着物に貼っていきます。例えば、柄の瓢箪から伸びた飾り紐は、あまりにも細すぎるため刺した物は貼れません。だから、そういった細かい部分は日本刺繍で補うことになります。専門の職人さんに頼むこともできますが、自分で縫った方がイメージ通りに仕上げることができます」



――江戸川区の産学公プロジェクトに参加され、美大生とコラボレーションしたと伺いました。
「学生さんのいいところは、今までの絽刺しでは全く考えたこともなかったような柄をデザインしてくるところ。汽車の窓から見た風景とか、色々な柄を点在させても、安心して見ていられるデザインとかね。『逆のの字』の形に色糸を配置すると黄金比になるんですって。色を置くのはとても難しいのですが、聞いてみると『ああ、なるほど』って思えることもたくさんありました。彼女たちはそういう勉強をしてきているので、話をしていてとても面白かったです」

――今、どういう物を制作していますか。
「昔は絽刺しの袈裟もあったとは思うのですが、今は残っていません。方々探して、ようやくフランスの博物館に収蔵されていることが分かりました。こうした伝統を伝える意味でも、現在、家の菩提寺の二代目に寄進するための袈裟を制作し始めた所です。まだ若いお坊さんなので、最高に格調の高い蜀江文様と宝相華をイメージした柄を若々しい配色で配置していま」

――新しい取り組みをしているそうですね。
「数年前から新たな表現として、前面に膨らみを造形し、立体感を出す3D絽刺しの研究をしています。普通に綿を入れたのでは、両面が膨らんでしまいます。額装したり、掛け軸にする際に浮かないよう、片面だけがふっくらと膨らんで、立体表現ができるように試行錯誤を繰り返しています。今まで多くの方に絽刺しの魅力を伝えようと活動してきました。おかげさまで、この技術を受け継ぐ後継者たちも育ってきましたので、今後の展開にとても期待しています」

構成:久保田明須香

渡辺 靖子(わたなべ・やすこ)/

昭和12年 東京に生まれる。
昭和52年 日本刺繍の道に入る。
平成18年 日本刺繍の勉強中に絽刺しに巡り合い、この道に進む。
平成19年 日本手工芸指導協会作品展銅賞受賞。
平成20年 第14回ホノルルフェスティバルに出品及び参加。
平成21年 全国伝統的工芸品公募展入選。以降3回出品入選。
平成22年 第27回江戸川伝統工芸保存会工芸展奨励賞受賞。



名刺入れ 吉野
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