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松井宏インタビュー

扇子の起源は古く、平安時代までさかのぼる。元来は涼を呼ぶための道具ではなく、貴族の身分をあらわす象徴だったという。ゆえに、扇子作りは、京都が本場とされるが、東京でも伝統的な扇子作りが継承されている。松井宏さんは、先代から教わった江戸扇子の技を息子と2人で守り続ける一方、ファッションデザイナーや若手からの依頼や、若手アーティストとの競作にも取り組んでいる。

――会社員を辞めて、この道に入られた。
「父は、扇子作りの職人でした。家族総出で手伝いをさせられるのが嫌で、昭和43年から3年間、勤めに出て、事務職の仕事をしていました。ところが、私の体質には合いませんでした(笑)。サラリーマンは、人にも時間にも拘束され、通勤もあるでしょう。結局、会社を辞めて、家の仕事を手伝うようになりました。ところが、昭和48年に第1次オイルショックが起きて、注文が激減しました。仕方なく、昼間は会社員として働き、夜は深夜まで扇子を作るということをしばらく続けました」

――それでも、家業を継ごうと決心された。
「正直にいうと、10年間くらい悩んでいました。扇子作り一本で、この先もずっと食べて行けるか、不安でしたから。でも、同業の職人が次々とリタイヤしたり、亡くなっていく状況になって、扇子作りの伝統を絶やすことは惜しいと思うようになりました。オイルショックの後は、仕事を増やそうと営業に出たこともあります。しかし、玄関の扉さえ開けてくれない。100軒営業して、話を聞いてくれるのは1軒ほどです。本当に屈辱でした。それからは、じっくり腰を据えて、注文が来るのを待つようにしました」

――京都の扇子とは、どこが違いますか。
「京扇子は、産地として歴史があるだけに、工程が分業化されています。江戸扇子は、平地(扇に張る紙)作りから、仕上げまでを一人でこなします。私も絵付けと、扇骨作り以外、すべて自分でやっています。見た目も、京都と江戸の扇子では違います。京扇子は折り幅が狭くて、骨がたくさんあり、繊細な印象を受けます。江戸扇子は、折り幅が広く、骨の数が少ないので、男性的です。江戸が武家社会だったことが影響しているのかもしれません。絵柄もシンプルで粋なものが多いですね」


――1本の扇子を仕上げるには、どのくらいの時間がかかりますか。
「百貨店で実演販売しているとき、『買い物終わるまでに、1本作っといて』とお客さんにいわれたことがあります。扇子は、竹と和紙だけでできているので、作るのが簡単そうに見えるのでしょう(笑)。実際は、1本を仕上げるのに、最低でも4日はかかります。大ざっぱにいうと、和紙を折って、干して、乾かし、漉かせて、骨をつけるという順序になります。細かくいうと、30の工程に分かれます。しかも、自然素材を使っているので、湿度の影響を受けやすい。季節によって勘所が違うのが難しいところです。勘所を外すと、和紙と骨がなじまず、閉じたときに折り目がそろわない不格好な扇子になってしまいます」

――最近は、安価な扇子も出回っています。
「ほとんどは、中国製です。安い扇子は、使っているうちに折り目が揃わなくなってきますが、日本の職人が作った扇子は、パチッと音を立てて、きれいに閉じます。中には、10年、15年、うちの扇子を使っているお客さんもいらっしゃいます」

――いろいろな扇子がありますね。
「扇子は大きく分けると、5種類あります。宮中で使われる檜扇(ひおうぎ)。床の間に飾る飾り扇。踊りに使う舞扇(まいせん)。扇ぐための持ち扇。お祝い事に使う祝儀扇。さらに同じ形でも、男持ち、女持ち、男女どちらも使える相持ちがあります。それぞれ細かく寸法が決まっていますから、全部合わせると、相当な数になります」



――扇子は、ただ扇ぐだけの道具ではない。
「扇の原点は、平安時代に生まれた檜扇(ひおうぎ)とされています。当時は、貴族の身分をあらわすシンボルとして使われていました。その元をたどると、木簡、いまでいうメモ帳だったようです。それが進化して、現在のような形になったといわれています」

――扇子は人なりといわれる所以ですね。
「扇子と日本人のつながりは、一生続きます。おぎゃあと生まれて、ひと月ほど経つと、お宮参りに行きます。そのときに産土神(うぶすながみ)に扇子を奉納します。七五三のときも同様です。成人式や結婚式には、祝儀扇を帯に差していきます。還暦や古稀の祝いにも、扇子は欠かせません。亡くなったら、棺の中にも扇子を納めます。つまり、人生の節目には必ず扇子がある。そういうことを、いまの若い方に知ってもらえたら、扇子を見る目が変わるのではないかと思います」

写真:岡村靖子 構成:菅村大全

松井 宏(まつい・ひろし)/

昭和22年 江戸川区生まれ。
昭和33年 11才より父のもとで扇子作りの手伝いを始める。
昭和44年 本格的修行に入る。
昭和57年 ホテル・デパート・各種イベント・江戸川区内地域まつり・小中学生による体験学習・海外の日本フェア等に参加し、江戸扇子の発展と普及に努め今日に至る。
平成16年 江戸川区無形文化財認定。
平成26年 東京都優秀技能者(東京マイスター)に認定
平成27年 「グラデーション扇子」が経産省 The Wonder 500 に認定

東京都伝統工芸技術保存連合会(理事)江戸川地区会員
江戸川伝統工芸保存会副会長
最近は、テレビやメディアで活躍が多く取り上げられています。


グラデーション扇子
松井宏 代表作 グラデーション扇子
閉じたときの扇面の模様とグラデーションが斬新です。片側が短い設計になっているのでスムーズにあおぐことが出来ます。

京扇子とは違う江戸の粋を継承する松井さんと美大生(東京造形大学 松本 朋子さん)の新鮮なデザイン感覚から生み出された大評判の江戸扇子です。
モダン(青)
江戸扇子
モダン(青)
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グBreaking Dawn
江戸扇子
Breaking Dawn
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くじら(大)
江戸扇子
くじら(大)
くじら(大)
柿渋
江戸扇子
柿渋
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