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石井 恒夫インタビュー

木とともに暮らしがあった時代、銘木に精緻な彫刻を施した床の間や欄間は、その家の権勢を物語る「物言わぬ、語り部」でもあった。石井恒夫さんは、そうした和風建築に欠かせない組み付け彫刻を彫ることができる数少ない職人の一人だ。釘をいっさい使わず、木彫で障子に絵を描く技は、絵心と木彫技術の二つを持ち合わせなければなしえない技でもある。この道65年の大ベテランは今、地元にある国の天然記念物「影向の松」を力強く刻み続けている。

――この道に進んだきっかけはなんですか。
「私の時代はちょうど戦後の就職難。実家の側に、私の師となる佐藤蔵治先生が住んでいたのがきっかけで弟子入りすることになりました。私が奉公していたのは、だいたい4年。その間に、ノミの扱い方など、彫り方の基本を覚えました」

――独立した頃の一番大きい仕事は。
「建具の彫刻や鎌倉彫の箪笥など和家具が多かったですね。欄間ももちろん彫りましたが、障子の骨組みを利用した『組み付け彫刻』が多かった時代です。一般の家でも窓にそうした彫刻をつけていたんですからね。今は、家のありようが変化したせいで、そうした仕事が減りました」

――絵が上手くないとできない仕事ですか。
「そうですね。自分で構図を起こさなくてはならないので。でも今は、写真をもとに起こすこともできます。江戸川区善養寺にある国の天然記念物『影向の松』を彫っていますが、これに関しては、写真を撮ってもらいました」


――こうした彫刻を施す場合は、木表と木裏のどちらを使うのですか。
「基本は木表を使います。やはり、表面の方が奇麗ですし、木目も整っています。でも素材によっては木裏を使った方が良い場合もあります。使う木の材質によって職人の眼で選択しながら変えることもありますよ」

――ご自身の最高傑作は。
「6、7年前に展覧会で発表した七福神の欄間です。七福神は宝船に乗っているものなのですが、欄間にするので、私は船に乗せませんでした。その方が横幅を活かせるし、一人ひとりをしっかり表現できます。華やかな作品にしたかったので彩色も施しました。カラフルでいいでしょ(笑) これがもし一色だと彫りも変わってきます。天井近くに飾る欄間で立体感を出すためには、そうとう深く彫らないと分からないので」

――どれくらいの期間で彫ったものですか。
「この七福神の欄間はヒバを彫ったものですが、だいたい2カ月はかかりますね。下絵の次に、どう立体で表現するかを考えてから彫るので」



――彫刻刀は何種類くらいあるんですか。
「400挺くらいあります。建築によっては、彫刻刀のサイズが合わないと彫れないこともあるので数はありますが、使うのはだいたい決まっています。だから、一回使っただけで、後は使わない彫刻刀もずいぶんあります」

――その中には、何十年も使い続けている彫刻刀などもあるんですか。
「ありますね。よく使う道具は、何度も刃を替えて同じものを使い続けます。今使っている彫刻刀の刃は5センチと、だいぶ短く見えますが、新品の頃は20センチくらいありました」

――江戸川区の産学公プロジェクトに参加され、美大生とコラボレーションしたと伺いました。
「当たり前だけど、学生さんは職人じゃないから木を知らないんですよ。木は折れることもあるし、あまり薄くもできません。私はそうした木の性質を教えて、彼女たちからはアイデアを貰いました。木のパズル『CONEET』(コニートは道をつないで遊びます)などは、学生さんならではのアイデアで面白かったですね。大変だったのはバッグ。細かい彫りを入れた木でバッグを作るのは初めてのことだったので大変でした」

――東京マイスターに選ばれているそうですが。
「優秀技能者のことですね。毎年何名か選ばれます。私の場合は、組合から推薦していただきました。私が組合に入ったばかりの頃は、関東近県で70名ほど所属していたのですが、職人の高齢化が進んだせいで数が減ってしまいました。今は40名ほどが所属しています」

――チャレンジしたいことはありますか。
「今はこの『影向の松』を自分の納得のいくまできちんと彫り上げたいですね」

構成:久保田明須香

石井 恒夫(いしい・つねお)/

昭和10年 福島県生まれ。
昭和26年 東京都へ移転。佐藤蔵治師のもとで修行。
昭和37年 現在地にて独立。
昭和60年 日本木彫連盟入会
 (現 日本木彫連盟 江戸木彫刻)
平成14年 東京都伝統工芸士認定。
平成18年 東京都マイスター公認。
平成24年 江戸川区伝統工芸会入会。



梟(フクロウ) 大
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Koume (紅梅)
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