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林信弘インタビュー

備前、有田、瀬戸、久谷、萩……日本に多くの焼き物どころがある中で、自らのブランドを打ち出していくのは容易ではない。産地であれば多くの窯元や作家との競走だし、それ以外の土地でやるのであれば、自らブランドを作り出さなくてはならない。小岩で生まれ育ち、小岩の土を使った焼き物「甲和焼」を手がける林信弘さんは、地元密着型の生活雑器の作り手である。小岩で焼き物を作る楽しみ、使う楽しさを発信し続けている。

――こちらの地名、小岩から「小岩焼」だと思い込んでいました。「甲和焼」なんですね。
「小岩はかつて『甲和里』と書いて〈こうわのさと〉と呼ばれていたそうです。そちらからとって『甲和焼』と名付けました」

――なぜ陶芸の道に?
「子どもの時から植物好きの昆虫好き。土に関係した仕事に就こうと大学の造園科に入学しましたが、たまたまテレビで人間国宝の濱田庄司さんがろくろをひく様子を見て、自分でもやってみたくなりました。といっても、どうやって作ったらいいのか分からない。神田の古本屋でようやく探し出したのが、大正時代に書かれた『陶磁器焼成技法』です。さて、粘土はどうしようと考えて、思い当たったが自宅の庭。そういえば、家から出た生ゴミを埋める穴を掘ったときに粘土が出ていたなと思い出して」

――小岩の土を原料にしたのは、陶芸を始めたときからなのですね。
「そうです。お金がないからあるものを使おうという発想。ろくろは古い洗濯機のモーターを使って、窯も自分でつくりました。両方とも今でも現役で使っていますよ」

――最初から手応えは感じられましたか?
「とんでもない。作りたい形に作れるようになったのは、10年以上も経ってから。最初はとても焼き物なんて呼べるものは出来ませんでしたが、掘った土が焼くと変化する様が面白くて没頭しました。結局大学は中退してしまって、朝5時から弁当屋でアルバイトをしながら作り続ける生活です」


――続けることに迷いは?
「迷いはありませんでしたが、自分の中で作った壁に苦しんでいましたね。寝ている間に歯ぎしりがすごい、『今に見ていろ』と寝言で怒鳴ったと家内からよく言われました」

――転機は何でしょう?
「10年ほど続けてようやくどうにか売り物になるかと思えるものが作れるようになって、自宅の一部を店舗に改造して売り始めたら、ぽつりぽつりと『陶芸を教えて欲しい』という人があらわれ始めました。自分で作ったものを使う生活が楽しいと生徒さんから言われて、ああ、焼き物にはそうした効果があるのかと気づき、自分もラクになりました」

――小岩の土の特長はなんでしょう。
「小岩に限らず関東地方の土は鉄分が多いので、焼き上がると備前焼のような茶色になります。けっしていつも同じ茶色には焼き上がらずに、微妙に異なる茶色の焼き物ができるのが面白い」


――江戸にもともと焼き物はあったのでしょうか。
「ありません。埼玉には『飯能焼』がありましたが、あまり長くは続かなかったようです。土の性質として乾燥している間に割れやすい、歩留まりが悪いんですね。基本的には関東の土は焼き物には適していませんね」

――それでも小岩の土を使ってらっしゃる。
「はい。どこかに一箇所は小岩の土は使うようにしています。小岩の土から陶芸をスタートしていますから、多少厄介でも愛着がある。もちろん小岩の土だけでは茶色しか表現できませんから、他の土地の土も使いますが」

――「甲和焼」の元祖として、今後はどのような活動を?
「暮らしの中で毎日使える焼き物を作り続けたい。陶芸家の作家の方が僕の店を見たら『もっとアイテムを絞りなさい』というと思いますが、店に来るお客さんの顔を見て、話を聞いていると、焼き物にもいろいろなニーズがあることがよく分かる。自分が気に入った焼き物を日々使う楽しみを皆さんに知っていただきたいんです」

――仕事は三代続くと伝統になると言われています。
「たいそうなことを目指しているわけではありませんが、娘が2年前に会社を辞めて一緒に作品作りをしています。その前に、『わたしもやりたい』と言って、昼間は勤めながら毎晩ろくろの練習を1年間続けました。僕に師匠はいないから、君も勝手にやりなさいと放っておいたら、自分でどうにかこうにかやるようになって。いま、店には娘の作品も一部並べています。僕とは違った物作りの目線をしていて、おもしろいですね」

写真:岡村靖子 構成:宮坂敦子

はやし・のぶひろ/

昭和21年 江戸川区生まれ。23才より陶芸を始める。
昭和56年 日本陶芸展入選。
昭和62年 江戸川伝統工芸展区長賞受賞。
平成7年 江戸川伝統工芸展奨励賞受賞。
平成14年 江戸川伝統工芸展技能賞受賞。
平成16年 江戸川伝統工芸展技能賞受賞。
平成17年 江戸川伝統工芸展区長賞受賞。
平成18年 江戸川伝統工芸展技能賞受賞。

甲和土ビアマグ
林信弘 代表作 甲和土ビアマグ
関東地方には、その土地の成り立ちにより陶芸に適した粘土は少なく、筑波山のふもとに算出する粘土により益子焼、笠間焼ぐらいが有名な状況です。特に東京都内では焼物に使える耐火力の強い粘土が殆ど存在しないことから陶芸の伝統文化は育ってきていません。林さんは、東京都江戸川区小岩の粘土に着目し工夫を重ね鉄分が多いことから茶色に仕上がる甲和焼きビアマグを完成されました。大変きめ細かなビールの泡立ちが楽しめるビアマグとして定評頂いております。また、欅の灰をかけた甲和土灰柚ビアマグやアサリ、ハマグリの貝殻を作品の傍に置いて焼き上げた甲和土貝跡ビアマグなどにも発展させています。
刷毛目茶碗
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刷毛目茶碗
木葉天目 盃
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あかり
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